JR東日本/吾妻線(渋川-大前) 乗車記

2022.3.15


乗車区間  (高崎 8:53 →) 渋川 9:20 → 大前 10:41 (525M)
 大前 11:02 → 祖母島 12:14 (532M)
 祖母島 15:18 → 渋川 15:29 (→ 高崎 15:57) (536M)
乗車列車  普通 525M 高崎発、大前行き
 普通 532M 大前発、新前橋行き
 普通 536M 長野原草津口発、高崎行き
車両  国鉄211系電車3000番台 / A-32編成(4両/高崎車両センター) (525M)
 
国鉄211系電車3000番台 / A-32編成(4両/高崎車両センター) (532M)
 国鉄211系電車3000番台 / A-28編成(4両/高崎車両センター) (536M)

吾妻線・路線図

吾妻線について
 吾妻郡六合村(現・中之条町)の群馬鉄山(1963年閉山)で採掘された鉄鉱石の輸送のための路線として1945年、渋川-長野原(現・長野原草津口)間が長野原線として開業した。長野原以西は、嬬恋までの予定線が「嬬恋線」として1963年に工事着手された。1971年3月7日、大前まで延伸開業、同時に線区名が吾妻線に改称された。嬬恋から信越本線豊野まで延伸する予定が決定されていたが未着工に終わった。大前- 豊野間の建設を断念した理由として、土地の事前調査により大前以西の嬬恋村内の地熱が高く長大トンネルを掘削して列車を通過させることが危険だという技術的な判断もあったとされる。
 岩島-長野原草津口間は、八ッ場ダムの建設によりダム湖に水没するため、線路の付け替え工事が行われた。川原湯温泉駅は温泉街と同様に西側の高台へ移転し、新たな川原湯温泉駅が設けられた。2014年9月24日をもって岩島-長野原草津口間の旧線での営業を終了して、10月1日から新線経由で全線営業運転を再開した。
 2022年7月、JR東日本は、利用者が少ない線区について、収支状況と営業係数を公表した。対象となったのは、2019年度に輸送密度2,000人未満だった35路線66区間だ。その中に吾妻線の長野原草津口-大前間が含まれていて、320人となっている。吾妻線全体では2000人(2206人)を少し上回っているようなので、区間の分け方には恣意的なものを感じる。
営業距離  渋川-大前 55.3㎞ 
  (渋川-長野原草津口 42.0㎞)
  (長野原草津口-大前 13.3㎞)
電化・非電化   全区間直流電化
2019年度輸送密度  渋川-大前 2,206人
  (渋川-長野原草津口 2,803人)
  (長野原草津口-大前 320人)
単線・複線   全区間単線

2022.9.6 作成


 青春18きっぷを利用しての乗りつぶしの旅として、吾妻線に乗車する計画を立てた。吾妻線の万座・鹿沢口-大前間は1日4往復しか運転されていない上、運行されている時間帯が朝方と夕方に限られている。そのため、早朝に出発して早めに帰ってくる計画を立てた。復路に乗りつぶす路線がなかったので、吾妻線の祖母島駅近くの撮影地で 651系「草津」と 211系を撮影することにした。この撮影地は8年前に 185系「草津」を撮影に2度訪れて以来の訪問だ。その時は車(レンタカーと自家用車)で訪れたが、祖母島駅まで1.5㎞程度の距離なので徒歩圏内だ。

 JR東日本/高崎駅 (上越線/群馬県高崎市) / 8:53 発車

 8:35 頃上越線、信越本線発車ホームに降りると、大前行き 525M は既に入線していた。万座・鹿沢口発、高崎 8:30 着 524M の折り返し運用のようだ。車両は 211系3000番台4両編成だが、発車までにロングシートの8割以上が埋まってしまった。若者のグループが多く、合宿か旅行のようだがよくわからない。

 上越線/吾妻線 普通 525M 高崎(8:53)発、大前(10:41)行き
 
国鉄211系電車3000番台 / A-32編成 (4両/高崎車両センター)

 渋川から上越線を離れ、初乗車となる吾妻線に入る。まだ車内の4割程度の座席が埋まっている。吾妻線の渋川-長野原草津間はそれなりの輸送密度があり(2019年実績、2,803人)、観光や沿線住民の足として大きな役割を果たしているようだ。往路は車窓の景色に集中したので、写真は撮らなかった。
 岩島駅を過ぎると間もなく八ッ場ダム建設に伴う新ルートに入る。左に大きくカーブして真新しい橋梁を渡るのですぐわかる。しかし、新線区間は線路はまっすぐで乗り心地が急によくなるので、外を見ていなくてもすぐにわかる。しかし、トンネル区間が多いので車窓はあまり期待できない。
 新線上に移設された川原温泉駅を過ぎてしばらく走ると、右手から旧線(跡)が合流して長野原草津口駅に到着する。この駅でほとんどの乗客が電車を降りていった。大きな荷物の一般の観光客もいるが、圧倒的に若者のグループが多い。この駅は草津温泉方面への最寄り駅なので、そちらへ向かうのだろうか。
 その先、万座・鹿沢口駅を過ぎると、先頭車両の乗客は5人となった。終点、大前駅で下車したのは全部で7人だった。私を含めた5人は同業者で、折り返し時間を利用してあちこちと写真を撮っていた。残る2人の男女づれは、写真を数枚撮り、乗務員と何か話を交わして駅を出て集落の方へ歩いて行った。地元の住民ではないようだし、何の目的なのか謎だ。

 JR東日本/大前駅 (吾妻線/群馬県吾妻郡嬬恋村) / 10:41 到着(折り返し乗車) 11:02 発車
 
 

 大前駅での折り返し時間は20分で、終着駅の気分を味わうのにちょうどいい。こぢんまりとした待合室とトイレが置かれているが、自動券売機はおろか乗車駅証明書発行機すら設置されていない。また、吾妻線内で 交通系ICカードが使用できるのは中之条、長野原草津口、万座・鹿沢口だけだ。なんとも中途半端に思えるが、実際の利用状況を踏まえてのことなのだろう。
 駅前には広場以外に何もないが、吾妻川を渡った対岸には国道144号線が走っていて、そちらには集落がある。鉄道より高いところに位置していて、立派な建物が見えるが嬬恋村役場のようだ。大前駅で新たに乗車する客はなく、折り返しの5名を乗せて出発した。

 吾妻線/上越線 普通 532M 大前(11:02)発、新前橋(12:38)行き
 
国鉄211系電車3000番台 / A-32編成 (4両/高崎車両センター)

 隣の万座・鹿沢口駅は嬬恋村の中心駅で、万座温泉の最寄駅だ。大前発の上り電車は5本だけだったが、ここからは10本と倍の本数になる。2016年3月のダイヤ改正で特急「草津」の定期運が終了して、万座温泉へのアクセスは新幹線経由の軽井沢駅がメインになったようだ。かつてはみどりの窓口があったが、現在は無人駅だ。

 万座・鹿沢口駅 / 11:05

 万座・鹿沢口駅では数人が乗車したが、その先群馬大津駅までの区間はほとんど乗降がなかったようだ。そして、大前駅から群馬大津駅までは全て無人駅だ。

 袋倉駅 / 11:10

 羽根尾駅 / 11:15~16

 群馬大津駅 / 11:18~19

 次の長野原草津口駅は長野原町の中心駅で、草津温泉の最寄り駅となっている。2016年のダイヤ改正から、上野方面からの特急「草津」の終着駅となっている。吾妻線の駅はほとんどが無人駅だが、この長野原草津口駅と中之条駅だけには駅員が配置されている(上越線所属の渋川駅も有人駅)。
 川原湯温泉駅の東方に建設された八ッ場ダムの本体工事に伴い、2014年10月1日から岩島駅-長野原草津口駅間のルートが切り替えられた。八ッ場ダム問題に直面する長野原町の生活再建策の一つとして新駅舎が建設されたとなっているが、そのあたりのいきさつについてはよくわからない。
 2022年7月にJR東日本から公表された収支状況と営業係数によると、長野原草津口駅-大前駅間については鉄道による維持は難しいと考えていると思われるが、渋川駅-長野原草津口駅間については当面はそのまま残すということなのだろうか。

 長野原草津口駅 / 11:22~25

 往路と同じく(反対に)、この電車も長野原草津口駅で多くの若者のグループの乗車があった。草津温泉方面からの乗り換えだろうか、7、8割の座席が埋まった。
 長野原草津口駅を発車するとすぐに旧線を左に分けて新線区間に入る。新しいコンクリート橋で吾妻川を渡ると、間もなくトンネルに入る。トンネルを抜けたと思うとすぐに次のトンネルに入り、そのトンネルを抜けるとすぐに川原湯温泉駅だ。
 八ッ場ダムの建設により川原湯温泉地区は八ッ場あがつま湖(ダム湖)に水没するため、川原湯温泉駅は川原湯温泉と同様に旧温泉街より南側の高台に移築された。駅の北側にはキャンプ場などが隣接しているが、周辺に人の気配はあまり感じず、真新しい施設だけが印象に残った。


 川原湯温泉駅 / 11:30

 川原湯温泉駅を発車するとすぐにトンネルに入る。4,489メートルの長さの八ッ場トンネルだ。トンネルを抜けると新しいコンクリート橋で吾妻川を渡る。この橋は吾妻川第二橋梁で、線路は右にカーブして旧線に戻る。

 車窓 / 第二吾妻川橋梁(川原湯温泉→岩島)

 郷原駅 / 11:43~46

 中之条駅は中之条町の中心部に位置し、四万温泉、沢渡温泉への玄関口になっていて、特急「草津」の全列車が停車する。吾妻線の中間拠点駅で、駅長配置の直営駅だ。
 この駅ではまとまった乗車があった。特急「草津」1号との交換があったが、特急の車内は半分以上の席が埋まっていた。草津温泉方面に向かう観光客が主体なのだろう。

 中之条駅 / 11:54~57

 651系「草津」と 211系を撮影するため祖母島駅で下車する。祖母島駅は無人駅で、他に乗り降りする人はいなかった。単式ホームの小さな駅だが、まだ新しい待合室が設置されている。大前駅と同じように自動券売機も乗車駅証明書発行機もない。

 JR東日本/祖母島駅 (吾妻線/群馬県渋川市) / 12:14 到着(乗り換え) 15:18 発車

 昼食と撮影を済ませて祖母島駅に戻る。先ほどこの駅で降りたのは私1人だったが、これから乗車する乗客は2人だ。天気がよくて温かいが、風が強くなってきた。吹きっさらしのホームでは寒いので、待合室の中で電車を待った。
 高崎行きの 536M は「矢絣柄」カラーだった。このデザインは、両毛線沿線を活性化させるプロジェクト推進の一環として、A28編成が「両毛線=織物」をイメージした「矢絣柄」のデザインに変更されたそうだ。通常の運用に入っているようで、今日は吾妻線に乗り入れてる。

 吾妻線/上越線 普通 536M 長野原草津口(14:21)発、高崎(15:57)行き
 
国鉄211系電車3000番台 / A-28編成 (4両/「矢絣柄」/高崎車両センター)

 吾妻線沿線はほとんどが無人駅だが、車内での料金収受がない都市型ワンマン運転が行われている。そのため、祖母島駅を発車して間もなく車内検札にでくわした。八高線車内の時のように、ICカードリーダーでチェックも行われていた。536M の車内は空いていて、上越線内でもまとまった乗車はなかった。
 乗車した 536M は高崎行きだが、吾妻線の普通列車は全て上越線経由で新前橋駅または高崎駅から直通している。新前橋駅発着の普通列車は、高崎駅発、または高崎駅行きに連絡している。

 JR東日本/高崎駅 (上越線/群馬県高崎市) / 15:57 到着

 関東圏だが乗りつぶしの対象としては面倒だと考えていた吾妻線に無事乗車することができた。午後に撮影の時間を組み入れることにより、充実した一日となった。
 長野原草津口-大前間の輸送密度が 320人(2019年度)と公表されたが、万座・鹿沢口駅までは1日10往復半運行されているので、朝夕を中心にそれなりの需要があるということだ。これから地元との協議が始まるのだろうが、話がどのような方向にに進むのか非常に気になる。





トップへ
戻る




inserted by FC2 system