JR西日本/芸備線(備中神代→三次→備後落合) 乗車記

2022.4.5~6


乗車区間  4/5 (新見 13:02 →) 備中神代 13:12 → 備後落合 14:27 (443D)
    備後落合 14:43 → 三次 16:03 (359D)
 4/6 三次 6:55 → 備後落合 8:16 (350D)
 
 
乗車列車  普通 443D 新見発、備後落合行き
 普通 359D 備後落合発、三次行き
 普通 350D 三次発、備後落合行き
車両  JR西日本キハ120形気動車300番台 / 340(1両/岡山気動車区)(443D)
 JR西日本キハ120形気動車300番台 / 322(1両/下関総合車両所広島支所)(359D)
 JR西日本キハ120形気動車0番台 / 17(1両/下関総合車両所広島支所)(350D)

芸備線・路線図

芸備線について
 岡山県新見市の備中神代駅から広島県三次市の三次駅を経て広島県広島市の広島駅に至るJR西日本の鉄道路線(地方交通線)。路線距離は159.1㎞で、全線単線、非電化。姫新線とあわせて中国山地を縦断する鉄道となり、また木次線と結んで山陰山陽連絡線を形成していた。しかし、中国自動車道の開通や、山陽新幹線と接続する伯備線の特急列車網の整備などで、広島市から木次線を経由して松江市・米子市などと結んでいた陰陽連絡路線のメインルートからは外れ、現在は、広島市-三次市間の都市間輸送や広島市-三次市-庄原市および新見市-庄原市東城町といった沿線の通勤・通学輸送が主体の路線となっている。
 広島-備後庄原間は芸備鉄道により開業した。備後庄原-備後落合間は国有鉄道(鉄道省)により庄原線として、備後落合-備中神代間は三神線として建設された。広島-備中神代間が全通したのは1936年10月10日で、翌年には芸備鉄道全線が買収され芸備線となった。 
 2022年4月、JR西日本は、2019年度の輸送密度2000人未満の線区について、収支状況と営業係数を公表した。対象となったのは17路線30線区だった。その中に芸備線の備中神代-下深川間が含まれている。各区間の内訳は、備中神代-東城(81人)、東城-備後落合(11人)、備後落合-備後庄原(62人)、備後庄原-三次(381人)、三次-下深川(888人)となっている。特に、東城-備後落合間はJR5社の中でも最低の輸送密度だ。
 その前年、2021年6月、JR西日本の広島支社と岡山支社は、山ノ内(庄原市)- 備中神代(新見市)間の今後の運行の在り方や利用促進策を地元自治体や住民と協議したい旨、岡山県、広島県、新見市、庄原市へ申し入れを行った。

2022.10.6 作成


 中国地方のローカル線乗車を目的とした三泊四日の旅に出かけた。当初は大人の休日パスを使って東北地方の未乗車区間を乗りつぶそうと計画していたが、3月16日に発生した福島県沖地震のため東北新幹線が一部区間不通となってしまったため、その旅行はあきらめた。その代わりに、姫新線、芸備線(備中神代-三次間)、木次線乗車に出かけることにした。中国地方にも未乗車区間は多いが、とりあえず続けて乗車出来る路線として3線を選んだ。JALのマイルがたまっているため、マイルと青春18きっぷの残り1回分を使った。
 旅行二日目に全線未乗車の姫新線と未乗車区間のある芸備線に乗車した。芸備線の広島-三次間は、5年前に三江線乗車の後で乗車した。今日は青春18きっぷの最後の1回を利用する。芸備線の東城-備後落合間は1日3往復しか運行がないので、姫路-三次間を1日で乗り通すには今日乗車するダイヤしか考えられない。三次からだと、三次発 13:02 の 356D 乗れば姫路に 22:45 に到着できるが、あまり現実的な行程ではない。
 姫路から4本の列車を乗り継いで姫新線を完乗して、終点の新見に到着した。駅前の食堂で昼食を済ませて、芸備線直通(備中神代までは伯備線)の普通列車に乗り換える。芸備線のこの区間については40年以上前に、広島から宍道まで急行「ちどり」に乗車したことがある。芸備線、木次線経由の急行気動車で、これらの路線が陰陽連絡路線として機能していた時代のことだ。当時、鉄道の車両や駅設備については全く写真を撮影していなかったのだが、今考えると非常にもったいないことをした。

 4/5
 JR西日本 / 新見駅(岡山県新見市) / 13:02 発車

 芸備線の備後落合行き 443D は 12:44 に回送で入線した。車両はこれまでと同じキハ120形・1両だ。ボックス席に座りたかったので早めに並んだ。芸備線は正確には備後神代からで、そこまでは伯備線だ。しかし、芸備線のすべての列車が新見まで乗り入れている。
 入線した時には5,6名の乗客しかいなかったが、だんだん乗客は増え続けた。発車時刻までに座席は9割方埋まり、10人くらいの人が立っていた。そのほとんどは地元客ではなさそうだ。

 伯備線/芸備線 普通 443D 新見(13:02)発、備後落合(14:27)行き
 
JR西日本キハ120形気動車300番台 / 340(岡山色/1両/JR西日本/岡山気動車区)

 新見の次の布原という駅は変わっていて、芸備線直通列車だけ停車して、伯備線の普通電車は通過する。交換可能の駅のため、伯備線の列車は運転停車することはあるが客扱いはしない。1日の平均乗車人員が1人未満なので、わざわざ伯備線の普通電車を止める必要が無いようだ。付近には数軒の民家があるが、自動車で向かうにはかなり狭い道を長く通らなければならない。そのため秘境駅の分類に入り、マニアの間では有名な駅のようだ。

 布原駅/伯備線(岡山県新見市) / 13:07

 次の備中神代までが伯備線で、芸備線の起点駅となっている。ここで2人観光客らしき人が乗車した。ダイヤを確認すると伯備線上り普通電車が 12:52 に到着しているので、その電車からの乗り換えなのだろうか。駅周辺に名所や観光施設などはないようだが。

 備中神代駅(岡山県新見市) / 13:11~12

 備中神代を発車すると伯備線を右手に分け、南西に向かって走って行く。しばらくの間、神代川に沿って芸備線、中国自動車道と国道182号線が走っていく。野馳を過ぎ大竹山トンネルを抜けると、岡山県から広島県に入る。

 坂根駅(岡山県新見市) / 13:17

 矢神駅(岡山県新見市) / 13:26~27

 野馳駅(岡山県新見市) / 13:31~32
 

 広島県に入って最初の駅が東城駅で、旧東城町の代表駅だ。新見からの列車の半数がこの駅で折り返す。東城駅前からは広島行きの高速バスが運行されていて、残念ながら芸備線より早くて便利だ。
 この先、東城-備後落合間の運行は1日3往復だけで、全国でも有数の閑散路線となっている。2019年の東城-備後落合間の輸送密度は11人と公表されていて、この11人という数字はさすがに驚きだ。しかし、この列車についていえば、その数字とは裏腹に観光客などで賑わっている。昨年、JR西日本が備中神代-山ノ内間の今後について地元に対して対話を求めたのが影響しているのかもしれない。これまであまり問題にならなかったが、閑散区間の廃止の可能性が出てきたということだ。

 東城駅(広島県庄原市) / 13:38~39

 東城から線路は北に向かい、並行する国道も314号線に変わる。東城-備後庄原間のルートについて、建設当時は長大トンネルを掘る技術がまだなかったため、中国山地の山裾を迂回するように路線が敷設されたということらしい。実際、東城-備後庄原間の営業キロは 49.7㎞で、中国自動車道の東城IC-庄原IC間は 30.2㎞ となっている。

 車窓 / 成羽川(備後八幡→内名)

 内名駅(広島県庄原市) / 13:58

 終点の1つ手前の駅が道後山で、芸備線の最高所の駅だそうだ。最高所は駅の少し手前にあるということだ。また、秘境駅ということでマニアの間では有名らしい。近くに民家があるようだが、1日の平均乗車数はずっと1人未満だ。

 道後山駅(広島県庄原市) / 14:12~13

 次は終点の備後落合で三次行きに乗り換えるのだが、この時間は1日に1度3方向から列車が集まり折り返すタイミングだ。芸備線の三次方面は 14:21着、14:43発、新見方面は 14:27着、14:37発、木次線が 14:33着、14:41発となっている。14:27 から 14:37 の10分間だけ3編成が並ぶことになる。
 どのような人の動きになるのは分からないが、木次線の到着はこの列車より後なので、最悪この列車の乗客が全て三次行きに乗り換える可能性がある。同じキハ120形だと考えると、最悪座ることが出来ない可能性がある(ボックス席に割り込めば座れる出ろうが)。とにかく乗り換えは急がなければならない。ボックス席の窓際に座っているので、乗り換えには不利だ。

 JR西日本 / 備後落合駅(広島県庄原市) / 14:27 到着(乗り換え)14:43 発車

 三次行きは予定通り入線していて、とりあえず急いで乗り換えロングシートを確保した。どうなるか心配していたが、急いで乗り換えたのは半数くらいで、残りの乗客は駅舎(木次線乗り場)の方に移動していった。どうやら木次線に乗り換える乗客も多いようだ。
 とりあえず一安心して、急ぎ足で駅舎などを観察してきた。間もなく木次線の列車が到着して、駅構内はさらに賑やかになる。木次線から三次行きに乗り換える乗客も多く、三次行き 359D の座席はほぼ埋まってしまった。さらに乗客が増え、発車時点で立っている乗客もいて、25人以上が乗車していた。

 芸備線 普通 359D 備後落合(14:43)発、三次(16:03)行き
 
JR西日本キハ120形系気動車300番台 / 322(広島色/1両/JR西日本/下関総合車両所広島支所)

 そのように混雑した状態で発車したが、さらに途中駅で観光客を含めた乗客が乗車した。30人以上が乗っているのだろう。ロングシートに座って目の前には人が立ってるので、景色を楽しむこともできない。首都圏の行楽地からの帰りの電車のようだ。景色はおろか、ローカル線の雰囲気を楽しむことは全くできなかった。18きっぷ利用期間の晴れた日なので、平日なのにこれだけ人が集まってしまう。とても広島県の山の中とは思えない。しかし、この区間は明朝折り返すので、その時に期待することにした。

 備後庄原駅(広島県庄原市) / 15:27~31

 車内は混雑したままだったが、無事三次に到着して、姫新線と芸備線を完乗することができた。多くの乗客が広島行き快速「みよしライナー」に乗り換えたが、自分は三次泊なので改札を出てホテルに向かう。

 JR西日本 / 三次駅(広島県三次市) / 16:03 到着

 旅行三日目は昨日乗車した芸備線に乗り備後落合まで戻り、初乗車となる木次線に乗り換える。木次で乗り換え宍道まで行き、山陰本線に乗り換え松江まで行く。松江では松江城を見学して、一畑電鉄で宿泊場所の出雲市まで行く。
 6時20分にホテルを出発して三次駅に向かう。今日も素晴らしい天気だ。三次駅に到着して松江までの乗車券を購入しようとしたが困ったことになった。自動券売機では区域外で購入できず、長距離乗車券が購入できるみどりの券売機は7時から営業開始となっている。まだこの時間は駅員がいないらしい。そのことは承知していて、昨日到着時に、駅員に「明朝 6:55発の列車に乗るが、その時松江行きの乗車券は購入できるのか」と尋ねた。すると、さも当たり前のように「このみどりの券売機で購入できる」と言われた。当たり前のことを聞くんじゃないといった雰囲気なので、みどりの券売機の開始時間が7時となっている点を再確認しなかった。そして、今朝はこんなことになってしまったので、少々頭にきている。その駅員が間抜けだったのか、勘違いしたのはは分からない。しかし、こんなことになるのではないかと予想はしていた。仕方が無いので、自動券売機で購入できる木次線の1番遠くの駅(下久野、1880円)まで購入した。

 4/6
 JR西日本 / 三次駅(広島県三次市) / 6:55 発車
 

 1番線には 6:40発広島行き 1518D が停車していたが、2番線から発車する備後落合行き初発の 350D はまだ入線していなかった。1518D はキハ47形の堂々4両編成だ。車内はがらがらだが、広島に到着する時には満員になっているだろう。
 350D は 6:39 頃回送で入線してきた。残念ながらキハ120形0番台・1両なので全てロングシートだ。乗り込んだのは高校生と私の2人だけだ。しかし、ぱらぱらと乗車して、出発時には13人となった。うち8人が高校生で、見るからに同業者らしき人が1人いる。

 芸備線 普通 350D 三次(6:55)発、備後落合(8:16)行き
 
JR西日本キハ120形系気動車0番台 / 17(広島色/1両/JR西日本/下関総合車両所広島支所)

 通学時間帯ということで、途中駅からは高校生がぱらぱら乗車してくる。神杉で下り列車と交換がある。交換したのは福塩線・府中発の三次行き 1721D で、キハ120形・1両の車内はそれなりの乗客がいた。この列車が三次着の芸備線下りの初発だ。

 神杉駅(広島県三次市) / 7:04~07

 乗車したのはほとんどが高校生で、福塩線との乗換駅の塩町では27人まで乗客が増えた。車内は少し賑やかになったが、この朝の風景はローカル線らしくて悪くはない。その高校生たちは備後三日市と備後庄原で全てが降り、車内は静かになった。
 備後庄原では三次行き 351D と交換した。この 351D は備後落合初発の三次行きだ。車両はキハ120-332で、真っ赤な「広島カープラッピング」だった。このラッピングはJR西日本が独自に行ったものではなく、芸備線の利用促進や活性化を目的として沿線住民の有志により発足した「芸備線にカープ号を走らす会」を中心に募金活動や協賛を募る活動により集められた資金で行われたということだ。

 備後庄原駅(広島県庄原市) / 7:30

 備後庄原を過ぎると西城川に沿って走るようになり、狭い山間の中へ入っていく。高校生が降りて車内が空いてきたので、席を離れて車両の後ろから展望を楽しむ。

 車窓(後方) / 西城川沿いを走る(備後庄原→高)

 高で2人、平子で1人乗車した。高のホームにはテレビ局がロケで使うような大型のカメラを担いだ人がいて、乗車したうちの1人は乗客を観察しながらノートになにかメモをとっていた。何かの取材や調査なら腕章などを付けて思うのだが。

 車窓(後方) / 西城川との間の桜がきれいだ(平子→備後西城)

 高から乗車した何かの調査らしい1人はノートメモをとって、二駅乗車して備後西城で下車した。ノート以外に荷物は持っていなかったが、何者だったのだろうか。

 備後西城駅(広島県庄原市) / 7:56

 備後西城で一般の乗客は全て下車して、車内は三次からの同業者の2人だけになった。そちらは前方に座って、私は後方に座っていた。車内はがらがらで自由に移動ができるので、ロングシートの方がかえって都合が良い。これこそローカル線の楽しみだ。

 比婆山駅(広島県庄原市) / 8:01

 比婆山から先は本当に山の中に入り、周辺に人家はほとんど見当たらない。線形は悪く、急カーブ、急勾配、狭小トンネルが連続する。制限速度 25㎞ 区間が多く、さらに制限速度が低いところもある。比婆山-備後落合間は 5.6㎞ だが、所要時間が15分もかかる。JR西日本ではローカル線区の保守費用削減のため、このようにかなり低い制限速度を設けている。

 車窓(後方) / 比婆山→備後落合
 

 左から木次線の線路が近づいてくると、この列車の終点備後落合だ。広い構内の端には転車台と給炭設備の後などが残っている。一昔前は、鉄道の要所として賑わっていたのだろう。

 車窓(後方) / 木次線が近づいてくる(比婆山→備後落合)

 備後落合駅構内には他に人影はなく、350D から降りた2人だけのようだ。他に交通手段はないので次の木次線の乗客は私たちだけかと思った。しかし、駅舎周辺をうろうろしていると、4人のグループがやって来た。うち3人はNHKの撮影スタッフということで、その代表の人から挨拶を受け名刺をもらった。名刺には「NHKエンタープライズ中国支社ディレクター」とある。外国人向けの番組で、木次線のことを扱うということだ。この3人はカメラとともに木次まで同じ列車に乗って行くそうだ。
 もう1人の年輩の方は誰かというと、地元出身の国鉄、JR西日本の元機関士で、駅舎や花壇など駅周辺の整備をしている方だ。構内の小さな倉庫を借り受けて小さな博物館を管理していて、観光客に備後落合駅にまつわるガイドをしている。今回は私1人だけのために、小さな博物館を空けてもらい、待合室の展示物やこれらの歴史についていろいろ解説してくださった。職員としての体験談など、非常に貴重なお話だった。

 JR西日本 / 備後落合駅(広島県庄原市) / 8:16 到着

 芸備線の備中神代-三次間は、山間部や盆地部を走り抜け、車窓も変化に富んでいて乗って楽しい路線だ。廃止の可能性が出てきた区間が含まれるということで、全国の鉄道ファンも乗りに来ているようだ。青春18きっぷ利用期間なので、接続のいい列車は混雑するよう。しかし、地元の乗客は限られているようで、ここまで切羽詰まってくるとこのままの形で残すのは難しいだろう。個人的には是非残して欲しい路線だが、輸送密度が極端に低い区間はバス転換は避けられないだろう。今回は乗りつぶしのために訪れたが、また是非訪れたい路線のひとつだ。しかし、東京からは遠く、アクセスもあまり良くない。





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