JR東日本/花輪線(大館→好摩) 乗車記

2023.6.30


乗車区間  大館 6:21 → 好摩 (→ 盛岡 9:40) (1926D)
乗車列車  普通 1926D 大館発、盛岡行き
車両  JR東日本キハ111,112形気動車100番台 / 111-117+112-117(2両/盛岡車両センター)

花輪線・路線図

花輪線について
 花輪線は、岩手県盛岡市にある好摩駅から秋田県大館市にある大館駅を結ぶ、JR東日本の地方交通線。起点は好摩だが、すべての列車がいわて銀河鉄道線経由で盛岡まで乗り入れている。路線距離は 106.9kmで、全線非電化で単線だ。JR東日本が 2022年7月に公表した、2019年度に輸送密度2,000人未満だった35路線66区間のなかに全区間が含まれている。対象区間の内訳は、好摩-荒屋新町(418人)、荒屋新町-鹿角花輪(78人)、鹿角花輪-大館(537人)となっている。
 さらに、2022年8月13日 大雨の影響で鹿角花輪-大館間で土砂流入等の被害が計 54箇所で発生し不通となった。代行バスによる運行が続き、復旧し全線運行再開となったのは 2023年5月14日だった。
営業距離  好摩-大館 106.9㎞
 (好摩-荒屋新町 37.6㎞)
 (荒屋新町-鹿角花輪 32.1㎞)
 (鹿角花輪-大館 37.2㎞)
電化・非電化   全区間非電化
2019年度輸送密度  好摩-大館 357人
 (好摩-荒屋新町 418人)
 (荒屋新町-鹿角花輪 78人)
 (鹿角花輪-大館 537人)
単線・複線   全区間単線

2023.7.22 作成


 「大人の休日倶楽部パス」を利用して、5月に災害復旧により全線運転再開をした花輪線に乗車する二泊三日の旅に出かけた。花輪線とセットで乗車するのはどの路線にしようかとあれこれ考えたが、こちらも昨年10月に災害復旧した只見線に乗車した。代行バス区間を含む米坂線乗車も考えたが、こちらは後回しにした。それ以外に、未乗車の利府線(東北本線支線)と水郡線に乗車した。今回も三日間ひたすら列車に乗車する行程だが、初日に弘前城を見学する時間を設けることが出来た。
 大館市内に宿泊した旅行二日目に、大館から好摩(盛岡)まで花輪線に乗車した。花輪線は30年以上前に、安比高原→好摩(盛岡)まで乗車したことがあると思う。しかし、記録もなく記憶も曖昧なので、実質的に全区間初めてだといえる。その後、仙台まで東北新幹線で移動、東北本線と利府支線を乗り継いで利府まで往復する。そして、東北新幹線、上越新幹線、上越線を乗り継いで今日の宿がある小出に向かう。

 JR東日本 / 大館駅(秋田県大館市) / 6:21 発車

 いつものようにホテルは早いチェックアウトで、6:21発の列車に合わせて6時前には出発する。外は曇り空だが、大清水トンネルを抜けるまでは雨には遭わない予報だ。大館駅まで12分で到着、ホテルの案内通りの時間だ。まだ早い時間のせいか、駅には人の姿がほとんど無い。とりあえず自動改札を通り花輪線にホームに向かう。
 乗車する盛岡行き 1926D は花輪線ホームに入線していて、既に車内は開放されていた。車両はキハ111,112形 二両編成で、車掌が終点の盛岡まで乗務している。理由は不明だが、花輪線ではワンマン運転が行われていないようだ。次の花輪線は3時間後の鹿角花輪行きだが、この列車の乗客は4人だけだった。

 花輪線/いわて銀河鉄道線 普通 1926D 大館(6:21)発、盛岡(9:40)行き
 
JR東日本キハ111,112形気動車100番台 /111-117+112-117(2両/JR東日本/盛岡車両センター)

 2022年8月13日 大雨の影響で鹿角花輪-大館間で土砂流入等の被害が計 54箇所で発生し不通となった。代行バスによる運行が続き、復旧し全線運行再開となったのは 2023年5月14日だった。JR東日本が不採算路線を発表した直後の被災だったので復旧が心配されたが、無事全線運行再開となりほっとした。同時に被災した津軽線(蟹田-三厩間)と米坂線(今泉-坂町間)については、一年近く経つが復旧工事は手つかずのままで不通となっている。

 東大館駅(秋田県大館市) / 6:25~26

 扇田駅(秋田県大館市) / 6:31

 扇田で大館の市街地は終わり、盆地が狭くなると大滝温泉に到着する。大滝温泉では8分間の停車時間があり、下り列車と交換が行われる。交換したのは大館行き 921D で、キハ111,112形 二両編成だった。車内は高校生で賑わっていて座席はほぼ埋まっていた。

 大滝温泉駅(秋田県大館市) / 6:38~46

 十二所駅(秋田県大館市) / 6:49

 沢尻駅(秋田県大館市) / 6:53~54

 土深井駅(秋田県鹿角市) / 6:57

 末広駅(秋田県鹿角市) / 7:00

 列車は山間を米代川に沿って進むが、一面田んぼが広がっている。あたりが開けてくると、十和田南に到着。ここでは下り列車との交換などのため16分の停車時間があるので、改札を出て駅舎と駅前ロータリーを眺めてみた。
 駅舎は古い木造の立派なもので、1920年開業当時のものらしい(ただし、1935年に改築されたらしい)。広いロータリーがあるが、駅前には特に何もない。かつては十和田湖観光の入口の駅として十和田湖畔へ JRバス東北「十和田南線」等が運行されていたが、2003年に利用者減少により廃止になった。
 十和田南駅はスイッチバック構造の駅となっていて、運転方向切り替えのための停車時間が必要となっている。平地で敷地もあるのにこのような構造になっているのは、当駅から小坂への路線計画があった名残だそうだ。
 交換したのは大館行き 1923D で、キハ111,112形 二両編成だった。車内はやはり高校生で賑わっていて、7、8割の座席が埋まっていた。こちらの列車にも高校生などが10数名乗車して、車内は少し賑やかになった。

 十和田南駅(秋田県鹿角市) / 7:07~23

 十和田南で進行方向を変えて、今度は逆向きに列車は出発した。その先の分岐は来た方とは逆の左手に進み、田園風景の中を快調に走って行く。

 車窓 / 田園風景が広がる(十和田南→柴平)

 柴平駅(秋田県鹿角市) / 7:27

 周辺が賑やかになってくると、鹿角花輪に到着する。鹿角市の代表駅で、花輪線の線名の由来となった駅だ(旧駅名・陸中花輪)。鹿角花輪で高校生は全て下車した。一般の乗客のほとんども下車して数人が乗車しただけなので、車内は再び静かになった。
 乗車してきた大館から鹿角花輪までが、昨年の災害で不通になっていた区間だ。不通区間には代行バスが運行されていたが、運行されていたのは朝と夕方・夜だけだった。それ以外の時間帯は、秋北バスが運行する路線バス「大館花輪線」に乗車することが出来て、さらに鹿角花輪-大館間の利用に限り高速バス「みちのく号」まで利用できた。ただし、「大館花輪線」と「みちのく号」を利用するのには、事前に鹿角花輪駅もしくは大館駅の窓口で「振替輸送依頼書」を発行してもらう必要があった。

 鹿角花輪駅(秋田県鹿角市) / 7:32~33

 陸中大里駅(秋田県鹿角市) / 7:37~38

 八幡平駅(秋田県鹿角市) / 7:40~41

 八幡平を過ぎると沿線の様子は一変する。田園風景が広がる花輪盆地は終わり、米代川の深い谷の中へと入っていく。左手からは東北自動車道が近づき、この先は並行して走っていく。

 車窓 / 米代川(八幡平→湯瀬温泉)

 湯瀬温泉駅(秋田県鹿角市) / 7:46~47

 県境を越え岩手県に入って最初の駅は兄畑だ。列車はそのまま米代川に沿って上っていくが、田山の先で米代川と離れる。

 兄畑駅(岩手県八幡平市) / 7:52

 車窓 / 米代川(兄畑→田山)

 田山駅(岩手県八幡平市) / 8:00

 田山の先から、列車は東北自動車道と国道282号線から離れ、山の中へ分け入っていく。勾配のきつい上りが続き、エンジンもうなりをあげている。勾配の先は全長 645m の藤倉トンネルで、花輪線最長のトンネルだ。また、トンネルの内部で上り勾配から下り勾配へ変わり、日本海へ注ぐ米代川の水系から、太平洋へ注ぐ馬淵川の水系の分水嶺となっている。

 横間駅(岩手県八幡平市) / 8:11

 勾配を下り、山間の小さな無人駅、横間を出れば、次は荒屋新町に到着する。この駅では列車交換のため、7分間の停車時間がある。広い構内には旧盛岡機関区荒屋新町支区の扇形機関庫および転車台があり、冬季、保守を中心に現役で利用されているそうだ。交換したのは大館行き 1925D で、キハ110系 二両編成だった。

 北大野駅(福井県大野市) / 11:32~33

 小屋の畑駅(岩手県八幡平市) / 8:26

 荒屋新町を出発した列車は田園風景の広がる山間を静かに進んでいく。やがて車窓右手に、容姿の良い山が望まれる。しかし、山の斜面はスキー場に開発された無残な姿だ。リクルートが開発した「安比高原リゾート」で有名な前森山だ。

 赤坂田駅(岩手県八幡平市) / 8:31

 赤坂田を出ると龍ケ森越えの勾配区間に入る。33.3‰ の急勾配が2km 程度続く蒸気機関車時代の難所だ。全長 503.9m の龍ケ森トンネルを抜けると安比高原だ。「安比高原リゾート」の最寄り駅となるが、昔も今も駅周辺には何もない。
 かなり昔、安比高原から盛岡まで一度だけ花輪線に乗車した記憶がある。若い頃に「安比高原スキー場」に何度か出かけたが、基本的には岩手県北交通が主催したスキーツアーだった。行きは金曜日の夜、東京から岩手県北交通の貸し切りバスで安比高原スキー場に行き、ホテル安比グランド(現・ANAクラウンプラザリゾート安比高原)に宿泊して、日曜日の午後シャトルバスで盛岡まで行き、盛岡から東北新幹線で東京に帰るパターンだった。しかし、一度だけ同行者に急用ができて午前中に東京に帰らなければならなくなった。盛岡行きのシャトルバスの運行時間前だったので、安比高原駅行きのバスに乗車して、花輪線で盛岡に向かった。当時の段階でも「安比高原スキー場」は大規模な近代的なスキー場だったが、それに比べて安比高原駅付近には本当に何もなく、予想していたよりかなり小さな駅舎で驚いた記憶がある。

 安比高原駅(岩手県八幡平市) / 8:38~39

 安比高原では7、8人が乗車して出発した。龍ケ森越えの下り勾配区間で、右に左にカーブしながらどんどん標高を下げていく。こちら側も 33.3‰ の急勾配だが、下りなので快調だ。間もなく、松尾八幡平に到着した。かつては古い木造駅舎があったが、今は簡素な待合室だけだ。

 松尾八幡平駅(岩手県八幡平市) / 8:48

 北森駅(岩手県八幡平市) / 8:51~52

 平館駅(岩手県八幡平市) / 8:54~55

 大更駅(岩手県八幡平市) / 9:00~01

 東大更駅(岩手県八幡平市) / 9:05~06

 松尾八幡平を出発すると、山岳地帯が遠ざかり広々とした穀倉地へと車窓風景が一変する。右手には南部富士と呼ばれる岩手山の大きな姿がうっすらと見える。のどかな田園地帯を走り、右カーブを描きながら、列車は花輪線の起点の好摩駅構内にゆっくりと進入していく。かつては東北本線と花輪線の中継駅として賑わった名残として、使われていない広い構内が残っている。

 好摩駅(岩手県盛岡市) / 9:12~13

 ここからはいわて銀河鉄道線となるが、好摩では乗務員の交代は行われなかった。引き続き JR の乗務員が担当している。後で調べると、いわて銀河鉄道には気動車が運転できる運転士はいないようだ。
 好摩から二つ目の滝沢は、昨年いわて銀河鉄道乗車時に1時間足止めを食らった駅だ。「北海道 & 東日本パス」を使って北海道へ向かう途中の出来事だった。いわて銀河鉄道線内では各駅で乗車があり、車内は少し賑やかになってきた。盛岡では、(当たり前だが)いわて銀河鉄道のホームに定刻に到着した。無事、花輪線を完乗することが出来た。

 IGRいわて銀河鉄道 / 盛岡駅(岩手県盛岡市) / 9:40 到着

 花輪線に限ったことでは無く、赤字ローカル線全般に言えることだが、沿線人口の減少や少子化の影響で利用状況は非常に厳しいことになっている。そのため、「観光客を視野に入れた利用客層の拡大」を花輪線利用促進協議会は謳っているが、こちらも厳しそうだ。十和田八幡平国立公園が沿線近くにあるが、国立公園のアクセス路線として機能しているようには見えなかった。自然に恵まれた 100㎞を超える路線なので是非とも生き残って欲しい。



 花輪線/いわて銀河鉄道線 普通 1926D
 2023.06.30 (平日) ダイヤ
発     着 発 
大館 6:21 荒屋新町 8:14 8:21
東大館 6:25 6:26 小屋の畑 8:26 8:26
扇田 6:31 6:31 赤坂田 8:31 8:31
大滝温泉 6:38 6:46 安比高原 8:38 8:39
十二所 6:49 6:49 松尾八幡平 8:48 8:48
沢尻 6:53 6:54 北森 8:51 8:52
土深井 6:57 6:57 平館 8:54 8:55
末広 7:00 7:00 大更 9:00 9:01
十和田南 7:07 7:23 東大更 9:05 9:06
柴平 7:27 7:27 好摩 9:12 9:13
鹿角花輪 7:32 7:33 渋民 9:18 9:18
陸中大里 7:37 7:38 滝沢 9:22 9:23
八幡平 7:40 7:41 巣子 9:26 9:26
湯瀬温泉 7:46 7:47 厨川 9:31 9:31
兄畑 7:52 7:52 青山 9:34 9:35
田山 8:00 8:00 盛岡 9:40
横間 8:11 8:11 好摩-盛岡間はいわて銀河鉄道線



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