三陸鉄道 / リアス線 (盛→久慈) 乗車記

2021.9.10


乗車区間  盛 6:46 → 釜石 7:33(203D)
 釜石 7:50 → 久慈 11:06(1007D/1009D)
乗車列車  普通 203D 盛発、釜石行き
 普通 1007D/1009D 釜石発、久慈行き
車両  三陸鉄道36-700形気動車 / 36-712(203D)
 三陸鉄道36-700形気動車 / 36-705(107D/1009D)

三陸鉄道/リアス線・路線図

三陸鉄道/リアス線について
 リアス線は建設時の歴史的経緯により、盛-釜石間(南リアス線)、釜石-宮古間(リアス線)、宮古-久慈間(北リアス線)に分けられる。盛-釜石間および宮古-久慈間は鉄道公団により建設された区間で、1970年代に国鉄の路線として一部区間が開通していたものを、特定地方交通線の取り組みにより1984年に三陸鉄道が承継して全通させた。釜石-宮古間は鉄道省山田線の一部として1930年代に順次開通し、国鉄を経て、国鉄分割民営化に伴い発足した JR東日本により運営されていた区間で、2019年にJR東日本から三陸鉄道に移管された。
営業距離  盛-久慈 163.0㎞
 (南リアス線:盛-釜石 36.6㎞)
 (リアス線:釜石-宮古 55.4㎞)
 (北リアス線:宮古-久慈 71.0㎞)
電化・非電化 全区間非電化
2019年度輸送密度  盛-久慈 411人 単線・複線 全区間単線
三陸鉄道主要株主
(2020.3.31現在)
 岩手県 47.1%、宮古市 4.4%、岩手銀行 3.9%、大船渡市 3.8%、日本製鉄
 3.3%、東北電力 3.3%、一関市 2.3%、久慈市 2.1%、釜石市 2.1%

2023.8.30 作成


 えきねっとリニューアル記念 Web限定「大人の休日パス(東日本スペシャル)」を利用して、2021年9月にこれまで訪れたことのなかった三陸海岸方面に三泊四日の旅行に出かけた。さらに、9/11 の会津若松発新津行きの「SLばんえつ物語」のグリーン席が確保できたので、新潟まで足を伸ばした。
 大船渡市内に宿泊した旅行二日目に、盛から三陸鉄道に乗車し、釜石で乗り継いで終点の久慈まで行った。さらに八戸線に乗り継いで八戸まで行き、東北新幹線、山田線と乗り継いで宮古まで戻った。宮古を宿泊地に選んだのは、翌日アストロメガで運行されている「106特急」に乗るためだった。

 三陸鉄道/JR東日本 / 盛駅(岩手県大船渡市) / 6:46 発車

 これから乗車する三陸鉄道リアス線の盛-釜石間は、山田線移管前には南リアス線と呼ばれていた区間だ。南リアス線の前身は国鉄盛線で、盛-吉浜間で開業していた盛線に、建設が中断されていた吉浜-釜石間を合わせて三陸鉄道に転換したものだ。
 乗車したのは 36-700形と呼ばれる三陸鉄道の主力車両で、釜石行きの乗客は私1人だった。2018年に増備されたのでまだ新しい車両で、新潟トランシス製の標準的な 18m車体で、ボックスシート主体の座席で窓は固定となっていた。

 三陸鉄道/リアス線 普通 203D 盛(6:46)発、釜石(7:33)行き
 
三陸鉄道36-700形気動車 / 36-712

 南リアス線の区間は 1970~80年代にかけて建設されたため、長大トンネルや大きな橋梁が多く、線形も直線的で、道路ともほとんどが立体交差化されている。

 陸前赤崎駅(岩手県大船渡市) / 6:51

 綾里駅(岩手県大船渡市) / 6:58

 初めて海を見ることができたのは綾里を過ぎてからで、右手に野々前漁港と綾里湾を見ることができる。昔ながらの漁村の感じだ。

  車窓 / 綾里湾(綾里→恋し浜)

 恋し浜駅(岩手県大船渡市) / 7:02

 恋し浜を過ぎて甫嶺の手前で、右手に大きな防潮堤と水門が見えてくる。自然の風景の中にはそぐわない巨大な建築物だが、三陸鉄道沿線では普通の景色となっている。三陸鉄道のこの区間はもともと築堤の上を走っていので、津波の被害はそれほど大きくなかったようだ。

 車窓 / 防潮堤と水門(恋し浜→甫嶺)

 甫嶺駅(岩手県大船渡市) / 7:06

 車窓 / 防潮堤(甫嶺→三陸)

 三陸駅は旧三陸町(平成の大合併で大船渡市に編入)の代表駅で、上り 204D と列車交換が行われた。車両は 36-700形 二両編成で、それなりの乗客が乗っていた。

 三陸駅(岩手県大船渡市) / 7:10

 吉浜駅(岩手県大船渡市) / 7:15

 唐丹駅(岩手県釜石市) / 7:22

 平田駅(岩手県釜石市) / 7:28

 車窓 / 甲子川(平田→釜石)

 その先もトンネルと入り江の繰り返しが続き、平田まで来ると市街地が広がってくる。そして、トンネルを抜けると釜石に到着したる。製鉄の町として栄えた沿線では大きな町だ。
 釜石駅のホームと駅舎は地下通路で結ばれている。三陸鉄道とJR東日本が乗り入れているが、地下通路が各分かれていて、改札や駅舎は別れている。三陸鉄道は無人改札で、運賃の支払いは無人駅と同じく車内で行われた。

 三陸鉄道/JR東日本 / 釜石駅(岩手県釜石市)/ 7:33 到着(乗り換え)7:50 発車

 三陸鉄道リアス線の釜石-宮古間はもともとJR山田線(盛岡-宮古-釜石)だったのを、2019年に東日本大震災からの復旧するのに伴い三陸鉄道へ移管した区間。JR東日本は釜石-宮古間の鉄道での復旧、再運行を拒否し、復旧費用の負担と将来の赤字予想分の負担を提案して、最終的に関係自治体は三陸鉄道への移管を受け入れた。これにより南リアス線(盛-釜石)と北リアス線(宮古-久慈)に分断されていた三陸鉄道は1本にまとまり、リアス線(盛-久慈)となった。
 乗車したのは先ほど乗車した車両と同型だが、36-705号機はクウェートの支援により2013年に導入された車両で、車両の前後にクウェート国章がペイントされ、車両側面にはクウェート国への感謝の言葉がアラビア語、英語、日本語で書かれていた。

 三陸鉄道/リアス線 普通 1007D/1009D 釜石(7:50)発、久慈(11:06)行き
 
三陸鉄道36-700形気動車 / 36-705(クウェートの支援により製造)

 釜石からは3名の乗客を乗せて出発した。旧山田線・釜石-宮古間の開業は戦前だったので、地形により忠実に海に沿って線路が敷かれている。そのため、車窓から海を見る機会は多い。

 車窓 / 両石港(釜石→両石)

 両石駅(岩手県釜石市) / 7:58

 鵜住居駅(岩手県釜石市) / 8:02

 大槌駅で上り 2006D と列車交換が行われた。36-700形 706 で、ポケモン・ラッピング車両だった。「ありがとう クウェート」の線用ヘッドマークを付けていた。

 大槌駅(岩手県上閉伊郡大槌町) / 8:10

 車窓 / 大槌川水門(大槌→吉里吉里)

 吉里吉里駅(岩手県上閉伊郡大槌町) / 8:16

 浪板海岸駅付近では曲線を描いた砂浜に松の木が立ち並んでる。この辺りの線路は曲線のみならず勾配もあるので、立体的に海を眺めることができる。その先、浪板海岸-岩手船越間は特に景色が美しい区間だ。

 車窓 / 浪板海岸(吉里吉里→浪板海岸)

 浪板海岸駅(岩手県上閉伊郡大槌町) / 8:19

 岩手船越駅(岩手県下閉伊郡山田町) / 8:28

 車窓 / 鯨と海の科学館(岩手船越→織笠)

 織笠駅(岩手県下閉伊郡山田町) / 8:33

 山田線の名前の元となった陸中山田駅で、上り 5008D と列車交換が行われた。車両は古い 36-100形で、三陸鉄道開業の 1984年から 1985年にかけて導入された。

 陸中山田駅(岩手県下閉伊郡山田町) / 8:36

 陸中山田を過ぎると、線路は海を離れて内陸部に入り、山越えの区間に入る

 豊間根駅(岩手県下閉伊郡山田町) / 8:51

 山越えが終わると津軽石で、次の八木沢・宮古短大は山田線・宮古-釜石駅間の三陸鉄道への経営移管と同時に開業した新しい駅だ。そして、次が山田線の終点の宮古だ。

 津軽石駅(岩手県宮古市) / 9:00

 車窓 / 津軽石川水門(津軽石→八木沢・宮古短大)

 磯鶏駅(岩手県宮古市) / 9:11

 この先、宮古-久慈間は、山田線移管前には北リアス線と呼ばれていた区間だ。北リアス線の前身は国鉄宮古線線(宮古-田老)、国鉄久慈線(普代-久慈)で、建設が中断されていた田老-普代間を合わせて三陸鉄道に転換したものだ。1984年4月1日に、先ほどの南リアス線と同時に北リアス線として全通した。

 宮古駅(岩手県宮古市) / 9:14~23

 宮古駅では9分間の停車時間があり、列車番号も変わる。途中から乗車した人達は宮古で下車して車内は静かになったが、ここでは観光客がまとめて乗り込んできた。宮古周辺に宿泊すると、ちょうどいい時間帯になるのだろう。海側のボックス席に空きが無くなる程度の乗車率だが、新型コロナウィルスの影響がなければ車内は混雑するかもしれない。

 一の渡駅(岩手県宮古市) / 9:35

 宮古から二つ目の一の渡で列車交換が行われたが、詳細は確認できなかった。これからの区間は南リアス線と同様にトンネルが多く、海から離れて走る区間が多い。最初に海に近づくのは田老付近だが、巨大な防潮堤のため海自体を見ることが出来ない。

 田老駅(岩手県宮古市) / 9:46

 新田老駅(岩手県宮古市) / 9:48

 岩泉小本駅(岩手県宮古市) / 10:01

 田野畑駅(岩手県下閉伊郡田野畑村) / 10:13

 普代駅(岩手県下閉伊郡普代村) / 10:24
 

 その後も長大トンネルと立派な橋梁の連続で、単調な景色が続く。海沿いの駅前も防波堤ばかりが目立つところが多い。そして、三陸鉄道の車窓のクライマックスは白井海岸-野田玉川間にある。
 白井海岸-堀内間にある大沢橋梁からの眺めは、国鉄時代より撮影地として有名らしい。列車は橋梁上で数分間停車して、景色を楽しむ時間が設けられている。

 車窓 / 大沢橋梁から(白井海岸→堀内)

 堀内を出てまもなく、やはり見晴らしの良い安家川橋梁にさしかかる。ここでも数分間の停車が行われ、景色を楽しんだり撮影する時間がある。写真で見るとたいしたことは無いが、実際に目にすると素晴らしい眺めだ。

 車窓 / 安家川橋梁から(堀内→野田玉川)

 野田玉川駅(岩手県九戸郡野田村) / 10:44

 その先十府ヶ浦海岸付近から海岸に近づくが、巨大な防潮堤のため海は見えない。そして、陸中野田からは内陸に入り山越えとなる。

 車窓 / 十府ヶ浦の防潮堤(野田玉川→十府ヶ浦海岸)

 十府ヶ浦海岸駅(岩手県九戸郡野田村) / 10:47

 陸中野田で上り列車と交換するダイヤだったが、詳細は確認していない。

 陸中野田駅(岩手県九戸郡野田村) / 10:52

 山を抜けるとまわりが開け、すぐに久慈の市街地に入る。長内川を渡ると JR八戸線との乗り換えの久慈に到着。三陸鉄道専用の単式ホームに到着し、他の駅と同じように一番前の扉だけが開き運賃の精算は車内で行われた。
 跨線橋で出口と JR八戸線ホームと連絡している。八戸線に乗り換えのため JR線ホームに移動したが、三陸鉄道用出口改札は無人と思われる。JR線ホームから JR改札出口へは跨線橋を使用せず構内踏切を通っていく構造になっている。釜石でも思ったが、JR と三陸鉄道の共同利用駅では、一般人には構造が分かりづらい。三陸鉄道は運賃精算をすべて車内で行い、有人駅で JR は改札で運賃の収受を行っている。そのため、各改札と通路を別々に設置する必要がある。

 三陸鉄道/JR東日本 / 久慈駅(岩手県久慈市) / 11:06 到着

 いつかは乗車したいと考えていた三陸鉄道リアス線を乗り通した。沿線は素晴らしい三陸の海と、復興途中の町並みを見ることができた。新型コロナウィルス蔓延のため観光客の姿は少なく、静かな時間を過ごすことが出来た。朝ドラ「あまちゃん」のロケ地となって一躍全国区になり、コロナ前はかなり混雑していたたようだ。
 三陸縦貫鉄道の完成には長い年月と紆余曲折を要したが、長く望まれていた鉄道開通の日には、既に車社会が到来していた。しかし、2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けた後も、南東北の常磐線と同様に、三陸鉄道は復興の象徴として全線営業を再開した。駅前に造成されて新たな一歩を踏み出した街並みや、随所にある地元住民による応援活動を見ると、鉄道の持つ大きな使命を感じずにはいられない。



 リアス線 普通 203D
 2021.03.13 改正ダイヤ
   リアス線 普通 1007D/1009D
 2021.03.13 改正ダイヤ
発     着 発     着 発 
6:46 釜石 7:50 一の渡 9:32 9:35
陸前赤崎 6:50 6:51 両石 7:58 7:58 佐羽根 9:39 9:39
綾里 6:57 6:58 鵜住宅 8:02 8:02 田老 9:45 9:45
恋し浜 7:02 7:02 大槌 8:07 8:10  新田老 9:46 9:47
甫嶺 7:05 7:06 吉里吉里 8:15 8:16 摂待 9:55 9:55
三陸 7:09 7:10 浪板海岸 8:19 8:19 岩泉小本 10:00 10:00
吉浜 7:15 7:15 岩手船越 8:27 8:28 鳥越 10:08 10:09
唐丹 7:21 7:22 織笠 8:33 8:33 田野畑 10:13 10:13
平田 7:28 7:28 陸中山田 8:36 8:36 普代 10:23 10:24
釜石 7:33 豊間根 8:50 8:51 白井海岸 10:29 10:29
払川 8:56 8:57 堀内 10:36 10:37
津軽石 9:00 9:00 野田玉川 10:43 10:44
八木沢・宮古短大 9:07 9:08 十府ヶ浦海岸 10:46 10:47
磯鶏 9:10 9:11 陸中野田 10:50 10:52
宮古 8:14 8:23 陸中宇部 10:57 10:57
山口団地 9:26 9:26 久慈 11:06



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